「紅蜘蛛 / Red Spider」シリーズの集大成ともいうべき作品。これまでに発表されたシリーズ三作の登場人物が端役に至るまで総登場し、主要な登場人物は一人ひとり深く掘り下げて描かれる。「紅蜘蛛 / Red Spider」シリーズのファンにとっては堪らない作品だ。なにより、一つひとつのシナリオが実におもしろい。編が変わるごとに「越児」の立場や主要登場人物との関係などがガラッと変わるため、出だしこそは意識の切り替えに戸惑わされるが、そこを過ぎるとあとはグイグイと作品世界に引き込まれてゆく。比較的展開がおとなしめな編もあるが、概ね次から次へと事態が目まぐるしく変化し、先が気になってゲームを途中で中断する気になれないほど興奮させられた。越児はもちろん、それぞれのキャラクタの見せ場もしっかりと用意されており、どのキャラのファンも満足がゆくであろう出来に仕上がっている。
一方で、登場人物が非常に多いため、誰が誰だったか混乱させられる面もあった。一応、筆者もこれまでの三作品はプレイしているのだが、「このキャラはいったいどんなキャラだったかなあ」と、とっさには思い出せなかったこともあったことを白状しておく。
おなじみのキャラの再登場と活躍が魅力の一部となっている作品であることは間違いなく、恐らくバックグラウンドもわからないであろうことから、本作品からいきなりプレイすることはお勧めはしない。パラレルワールド的な構成に違和感がなく、シリーズ作を一作でもプレイした経験があって、気に入っている方であれば、ぜひともプレイしていただきたい一本だ。
(秋山 俊)