香港ノワール系デジタルノベル「紅蜘蛛 / Red Spider」シリーズの集大成ともいえる完結編。6編の物語が展開される。第一作「紅蜘蛛 / Red Spider」のアフターストーリーが描かれたシリーズ完結編
「紅蜘蛛3 / Red Spider3」は、香港ノワールの世界観で展開されるハードボイルドなノベルゲーム「紅蜘蛛 / Red Spider」の後日談が描かれたシリーズ完結編。これまでに発表されたシリーズ作品──「紅蜘蛛 / Red Spider」「紅蜘蛛2 / Red Spider2」「紅蜘蛛外伝:暗戦」──の登場人物が総登場して活躍。完結編にふさわしい、ファン感涙の豪華な内容となっている。
ゲームの舞台は香港。主人公は当然、シリーズ全作を通じてのヒロインである「越児(ユェ)」。これまでのシリーズ作では第一作「紅蜘蛛 / Red Spider」以前の物語が描かれてきたが、今回は「紅蜘蛛 / Red Spider」以降の越児の姿がはじめて描かれる。
「紅蜘蛛 / Red Spider」は、「越児の夫で、九龍一帯を縄張りとする黒社会組織『紅花会』の当主『永孝(ヨンシャオ)」が、対抗組織構成員の放った凶弾により意識不明の重体となり、元は香港の暗殺組織『蜘蛛网(ウェッブ)』の殺し屋だった越児が、夫の暗殺を企んだ者への復讐を果たすため、自らを当主代行として幹部たちに認めさせる」というストーリーだった。誰をパートナーに選ぶかで、6ルートに分岐した。
「紅蜘蛛3 / Red Spider3」ではそれを受け、6ルートそれぞれの後日談、さらには越児の業の終着点が描かれる。
6ルートそれぞれの後日談がパラレルワールド的な構成で描かれる
物語は「陸(ルク)編」「樂(ユウ)編」「狗頭(ゴウ)編」「來(ライ)編」「鬼(グァイ)編」「永孝(ヨンシャオ)編」の6編からなる。各編は、それぞれ独立したIFの世界、いわばパラレルワールドのような構成。越児とパートナーの組み合わせ、それにともなう若干のストーリーの変化を除けば、大筋では共通した事件と時間が流れ、最終パート「永孝編」へと収束してゆく。
事件の時系列の関係で、最初からプレイできるのは「陸編」「樂編」「狗頭編」の3編。これらをすべてプレイすると次の「來編」「鬼編」が解放され、5編すべてをプレイすれば、「永孝編」が解放される。
「陸編」は、過去の復讐のため、越児が陸をともなって澳門(マカオ)を訪れるストーリー。二人はそこで、政府関係者のスキャンダルを握り、亡命を希望するジャーナリストを巡る中国公安部とCIAの攻防に巻き込まれる。タイの黒社会組織「新月(ニュームーン)」の当主「ラムローワン」たちとの再会も果たす。
「樂編」は、越児との交際をはじめたものの、兄の「陸」とは違って安全なことしかさせてもらえず、生活スタイルによるすれ違いも多くて悩む「樂」を主人公にしたストーリー。「風喜(フォンフェイ)」をはじめとした、地元香港メンバーの顔見せも楽しい。
警察上層部や内地との繋がりを深める蜘蛛网に対し、越児はひとつの決断をする
「狗頭編」は、雨傘革命に揺れる香港を舞台に、不正な工作を企む警察上層部の人間と、警察の正義を守ろうとする現場の警察官、ジャーナリスト、現そして元「紅花会」の構成員、「蜘蛛网」のメンバーなどがそれぞれの思惑で蠢き合う、根幹ともなるストーリーが展開される。雨傘革命に参加する狗頭の息子「日昇(シン)」の姿や、同じく雨傘革命に参加し、日昇と親しくなった「阿池(アチー)」「琳琳(ランラン)」といった新キャラも登場する。
「來編」は、越児が紅花会を離れ、「來」の探偵事務所を手助けしているときの物語。琳琳が「友人の亡くなった祖母を成仏させるため、霊媒師を紹介してほしい」と來の事務所にやって来るが、やがて物語は意外な展開を見せる。琳琳が幽霊と生きた人間とを区別できないことがわかるなど、オカルティックな要素も含まれる。
「鬼編」は、内地の黒社会組織「羅刹党」の進出に対抗するため、「洪興社」の「張雷(ジャン)」から、香港の黒社会組織「紅花会」「洪興社」「天上会」が同盟を組むことが提案される。警察上層部の人間と不正行為に抵抗する警察内部のグループ、内地との繋がりを深める「蜘蛛网」幹部などの暗闘も激化してゆく。
「永孝編」は、いよいよ最終編。越児は、紅花会を離れて一人、暗殺組織「蜘蛛网」の壊滅を目指す戦いをはじめようとするが……。