想定プレイ時間が20時間から30時間程度の、ちょっとレトロな“王道”長編RPG。王位継承の試練を嫌がって逃げる王子を追いかけるところからはじまり、徐々にスケールが拡大してゆくストーリーは、シンプルだがおもしろい。筆者は知らず知らずのうちに、作品世界に引き込まれた。登場するキャラクタも敵、味方、脇役を問わず、個性的で味がある(ギャグは一部上滑りしている感があるが、ドンマイ)。敵味方ともグラフィックがほぼオリジナルで、あえてレトロなドットテイストで仕上げられているのも楽しい。ただし、かなりリアルなGが大量に出現するので、Gが苦手な人は要注意だろう。
戦闘のゲームバランスもよい。お金は常に不足しており、強力な装備でゴリ押しするといった戦法は使えない。うかつに「突撃(自動戦闘)」を行うとあっさり全滅することも多いが、キャラを適切に育成して魔法や特技、奥技を適切に使えば、レベル上げをあまり行わなくても戦闘に勝利して、シナリオを進めることができる。特に状態異常系の技を適切に使えば、戦闘はかなり楽になる。ボス戦で経験値が入らない点も、戦闘がインフレを起こさないのでよかった。CTB形式による戦闘そのものもテンポがよく、気持ちがよい。
ストーリーが進展するにつれて、船による移動や星珠による転移などの移動システムが強化されたり、赤奥技と青奥技の2種類の奥技を習得できたりと、飽きがこないように工夫されているのもうれしい。
丁寧な作り込みによる絶妙のバランスで、気軽にじっくりと楽しめる、よくできたRPGだ。
(秋山 俊)