涙と哀しみを持った者たちが奏でる、優しい物語
冬。
雪の降る季節……白だけの世界。
何にも染まらない、その世界に暮らす人々。
街は、いつもと同じ時間を繰り返していた。
そして今日も、いつもと同じ時間を繰り返しているはずだった。
しかし、時間というものはいつも揺らいでいて……その泡に、人は飲み込まれていく。
雪は降りつづける……まるで、桜が舞い散るように。
ずっとずっと降りつづける……哀しい過去を埋めるかのように。
光と影。
二つの世界のバランスを取りながら、生きる人々。
そこに住む人々が生きていくためには、そうするしかなかったのだから。
微妙なバランスを取って生きるしかなかったから。
そのバランスが崩れたとき……このお話は始まった。
哀しいお話が。
ひとは、なぜ生まれるのだろう。
ひとは、なぜ死んでいくのだろう。
ひとは、なぜ人を愛するのだろう。
ひとは、何故悲しくなるのだろう。
ひとは、なぜ……
半人前の幸せしか持たない私たちだけど
みんな集まれば……きっと一人前くらいの幸せにはなるよ