日本の怪談のおどろおどろしい雰囲気がよく表現された、まさしく“和風”のホラーゲーム。BGMはなく、ザーッという雨音のようなノイズと効果音だけなのも、プレイヤーの不安を掻き立てる。なにより怪物が「早く、早く」と聞こえる不明瞭な声とともに追いかけてくるのが恐い。しかし、逆にいえば、恐怖の要素はそうしたもので、人を不快にさせるようなグロテスクな描写はない。「スプラッタ系の作品は苦手」という方でも安心してプレイできるだろう。
「少女奇談」のユニークな点は、一部に二人称視点が採用されていること。プレイヤーは、回想の中で「語り手の少女自身」となって屋敷の探索を進めるとともに、「少女の語る怪談を聞く聞き手」としてゲームの中に自らも参加することとなる。この演出が物語を若干、わかりづらくさせている部分があるものの、二周目以降に謎を理解するためには重要になる。
短時間でプレイできる、一見シンプルなゲームだが、実は密かにユニークなアイデアや小ネタがいろいろと仕込まれている。多くのプレイヤーには気づいてもらえないかもしれないであろう部分に費やしている労力は凄い。プレイ時間そのものは短めなので、どんな仕掛けが用意されているのか、ぜひ、いろいろと試してみていただきたい。
(秋山 俊)