いったんマウントしてしまえば、普通にファイルにアクセスするだけで暗号化・復号化を行ってくれるという手軽さ以外にも、いろいろと見どころの多いソフトだ。まず、安全性を重視する人にとっては、複数の暗号化アルゴリズムを組み合わせたカスケード(多段)処理やパスワードとキーファイルとの併用などが魅力だろう。ドライブとして快適に利用するには軽快な動作も重要だが、この点はマルチコアを利用した並列処理やパイプライン処理などで高速な処理を実現している。実際に暗号化ドライブから動画を再生しても、特にストレスは感じなかった。
仮想ドライブを利用するだけでなく、ドライブやパーティションを暗号化してしまうことで、パソコン全体での安全性はさらにアップする。実際にUSBメモリを暗号化してみたが、メモリを装着すると「デバイスの選択」にドライブやパーティションの一覧が表示される。その中からマウントしたいものを選択できるので、仮想ドライブのファイルをどこに作成したか忘れて探し回るよりもむしろ手間は省ける(ファイルの場合は「お気に入り」に登録しておけばよいのだが)。ただし、USBメモリを装着した時点で「フォーマットしていません」とメッセージが表示されるため、うっかりしていると暗号化ドライブそのものをフォーマットしてしまうかもしれないので気をつけよう。
そのほかにも、暗号化ドライブの存在そのものを秘匿したり、それを利用して隠しOS(本来のOSを秘匿してパスワード保護する)や、それをさらに欺くために囮OSを作成するといった、かなり手の込んだこともできる(もちろん十分な空きパーティションが必要だが)。
ほかの暗号化ドライブ作成ソフトに比べるとコマンドやボタンが多く、一見複雑に感じるが、仮想ドライブの作成やマウントといった基本的な操作には難しい点はなく、さほど心配する必要はない。ホームパソコンでのデータ管理はもちろん、持ち歩き用のモバイルパソコンやUSBメモリなど、全部まとめてデータを保護したい人に特にお勧めできる。
(福住 護)