亜人だらけの深い森に囲まれた小さな街を中心に話が展開する、細部まで丁寧に作られたゲーム。主人公の「リア」と亜人の「コーネ」「クーガ」といった主要キャラはもちろん、「ベネラ」の街の人々の一人ひとりに至るまでしっかりと描き込まれている。サブイベントなども用意され、さまざまな小さなドラマが展開されるのも楽しい。ほんのわずかな状況の変化でも会話の内容が変わるので、小まめに人々に話しかけるとよい。ストーリーも「亜人と人間との関係」という柱が一本通っている。本編終了後にオマケが用意されているのもうれしい。ゲームシステムにもさまざまなアイデアや工夫が盛り込まれ、作者の意欲が伝わってくる。戦闘中に敵データを閲覧して、敵の属性耐性や状態異常耐性などを即座に把握できたり、敵を攻撃したときに「弱点」「抵抗」などの文字が表示され、効果的な攻撃方法が一目瞭然だったりするのも親切だ。
ただ、スキルをいちいちセットする必要があるなど、成長システムが若干、不便な点や、戦闘が単調になりがちな点などは少し残念。ゲームバランスにも改善の余地があるように思う。しかし、それらを上回って余りある、しっかりと作られた、良質のゲームだ、ぜひ、一度プレイしてみていただきたい。
(秋山 俊)