今回の「EDICOLOR」のバージョン番号は「10」。最初のバージョンは1995年の登場とのことで、実に息が長い。1995年といえば、Windowsの爆発的な普及をする要因となったWindows 95が登場した年。固定サイズの文字、ひと通りの書体しか使えなかったそれまでのワープロソフトに代わり、自由なサイズの文字、さまざまな書体、グラフィックと文字とが同一ページ上に配置された印刷イメージをそのまま画面上で編集できる“WYSIWYG(What You See Is What You Get)”なDTPソフトが、GUIの普及開始とともに登場したのは、ある意味で当然といえる。だが、DTP(ページレイアウト)ソフトの位置付けは、登場から15年以上経った現在では、かなり変化してきたと思う。例えば、データ入力の面では、デジタルカメラのような、1995年当時ではまだまだめずらしかった機器が当たり前になり、誰でも高画質な写真画像を利用できるようになった。出力面でも、高画質カラープリンタが当たり前になり、DTPソフトを活用できる下地が十分にできている。
さらに大きな環境の変化といえるのが、出力結果の多様化だ。例えばWebページにしたり、PDFにしたり、さらにはスマートフォンやタブレットなどのポータブル機器に表示したりなど、単に印刷するだけでない使われ方が増えている。
「EDICOLOR 10」の新機能である「EPUB 3.0の入出力」は、まさにこうしたDTPソフトの位置付けの変化を象徴するものだ。出力する画面サイズの変化に応じて文字の配置が変化するという「リフロー」フォーマットのEPUBは、“編集したそのまま”が出力されるというWYSIWYGの思想に反する、ある意味でDTPソフトからは遠い存在ともいえる。
しかし、それでもなお、ユーザの使い方の変化に応じて、柔軟に新機能を取り入れる──こうした姿勢こそが長く使われ続けるソフトの必要条件なのだろう。
(天野 司)