ソフトを開発しようと思った動機、背景
このソフトの構想は「PeopleLogOn」の最初からからあったのですが、未着手でした。2016年12月頃にネッツトヨタ千葉社より連絡を受けました。同社は「業務用のタブレットPCを携えて外回りをしたい。ついてはセキュリティを導入したい」ということでした。同社がPCの持ち出しのためにセキュリティをどうしたらよいかと試行錯誤して、弊社のiWビーコンに落ち着いたそうです。生体認証、顔面認証、USB認証など、手探りで試行錯誤した結果、弊社に連絡をいただいたとのことです。
業務用のセキュリティ対策ソフトは個人用のセキュリティ対策ソフトとは状況が異なります。ざっと次のような注意があります。
- 今回の場合は、トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)本社のセキュリティガイドラインを満たしていること
- PCへのアクセス権は担当者のみならず、管理者も含まれること。業務用ならではですね
- 同時に数百台に導入するため、動作が安定していること。例えば一日の障害発生率が0.1%の場合、1,000台稼動した場合、毎日1台の障害が起きることになります。高い安定性が必要なこと
推測ですが、これらを考えると顔面認証、指紋認証などの生体認証はそのファジーさ、安定性から、採用は難しかったのでしょう。また、同社は2in1式のタブレットPC(Surface Pro 3)を使用しており、USBポートが一つしかなく、その性質からUSB式のセキュリティ対策ソフトも導入し難いとのことでした。お話を聞くに、施錠用のUSBメモリを刺しっぱなしにしてしまうという不安もあったようです。
このようなわけでUSBポートを占有せず、動作の安定した機械式であることからiWビーコンが残ったようです。
開発中に苦労した点
一つは、Windowsを構成する純正プログラムが案外、簡単に異常終了してしまうこと。個人用のPCであれば、再起動すればよいのですが、業務用──それも数百台が同時稼動している──の場合は、管理者・責任者としては問題があります。これには頭を抱えました。何しろ土台となるOSの問題だからです。これにはOSを再起動しなくてもよいよう、純正プログラムに異常が発生したときは回避機能を二重に組み込んで改善しました。
二つめに、業務用のPCはいろいろとカスタマイズされている場合が多いこと。複数のセキュリティ対策プログラムを組み合わせており、作動しないOSの標準機能がありました。したがって、これを回避するというか、OSの持つ高度な機能を使わず、単純な機能で置き換える必要がありました。
三つめに、マイクロソフトのコード署名問題がありました。VistaからWindowsはプログラムに作者の署名を推奨しています。この署名が現在、カオスな状態になっています。VistaではじまったMicrosoftアプリケーション(MS Authenticode)方式+SHA1でしたが、その後、SHA1が廃止になってSHA2になり、さらにMS Authenticode方式がEV署名に切り替わりました。これにより、Windows Vista、Windows 7、Windows 7+SP1、Windows 8、Windows 10で使える署名の組み合わせが異なるという問題──OSにの署名の方式よって動いたり、動かなかったりという問題──が出てきました。どの署名を採用するかの見極めに苦労しましたが、結局、弊社はMS Authenticode+SHA1、MS Authenticode+SHA2、EV署名の三つのライセンスを購入し、用途により使い分けて解決しました。
ユーザにお勧めする使い方
非常用のマスターキーとしてUSBメモリをご用意ください。これは机の中に入れて大事に保管してください。その上でお持ちのスマホを登録することをお勧めします。こうすると、離席時に自動的にロックがかかります。また、PCの前に立てば自動的にログオンして便利です。
そして、最初はセキュリティを緩くかけ、徐々に厳しくして、自分に合った設定を選んでください。セキュリティというのは厳しくするほど使いにくくなります。緩くするとセキュリティ上の問題が出て、痛し痒しです。自分に快適な範囲でそこそこにセキュリティをかけるというのが上手な使い方です。
あと、Windows Homeエディションのセーフモードにすると、パスワードなしでログオンできる問題があります。この場合、マウスキーボードロックのスイッチをONにすることをお勧めします。Windows Homeエディションに対してもセキュリティがかかります。小規模な会社では家電量販店で販売しているパソコンをそのまま買ってきて使っている場合が多いと思います。こういうときはマウスキーボードロックのスイッチをONにすれば、Windows Pro版並みにセキュリティが上がります。
今後のバージョンアップ予定
Windows 10対策ですね。半年サイクルでOSの入れ替えに近い現象が起きています。これに対しては根気よく対応するしかありません。Windows 10対策としては姉妹品「Windows10レスキューキット」と手分けして対応する予定です。
((有)電机本舗)