登場人物のモノローグと会話によって淡々と綴られる、ちょっと奇妙な物語。プレイ時間は15分から25分程度と短いものの、短いストーリーの中でしっかりと独特の世界観が描ききられた、なかなかの良作だ。登場人物は四人と少なめだが、無駄な人物が一人もおらず、全員が物語およびそのテーマと密接に関連しているのがよい。バスの中のエピソードもツッコミどころが楽しかった。本編プレイ後には、作者のあとがきが書かれた「おまけ」と、本編の補足シナリオ「その日の午後……」を読むことができる。
ゲームの中で使用されているグラフィックが美しく、しかも興味深いことも特徴として挙げられる。作中で使われているのは、イタリアのサレルノ県にある古代ローマ都市・ウェリアの遺跡およびアマルフィ大聖堂にある「天国の回廊」などの写真を加工したものらしい。「天国の回廊」が作品のタイトルになっているだけでなく、それらのグラフィックがこの不思議な物語に独特の説得力を与えているように感じられる。
(秋山 俊)