「VOCALOID4」対応版の「結月ゆかり」ボーカルライブラリが3種類になった。それぞれ特徴のあるボイスデータで、聞き比べれば、はっきりと違うことがわかるが、その違いはあくまで声の“タッチ”。声はいずれも同一人物「結月ゆかり」のものだ。3種類の声が同一人物のものだということで、それぞれを購入することに躊躇する人もいるかもしれない。ボイスデータを切り替えたり、複数のトラックに割り振ってデュエットさせたりできるのは「VOCALOID」の特徴だが、「個々のトラックがすべて同一人物では大きな違いが出ないのではないか?」と考えるからだろう。しかし、同一人物で3種類の声だからこそ意味がある。「VOCALOID4」の新機能「クロスシンセシス」を活かせるからだ。
「クロスシンセシス」では、同種のボイスデータの間同士で音声データの特徴をブレンドして、一人分の音声データを作り出せる。デュエットするわけではなく、あくまで特徴をミックスして声の調子を変化させるもの。ブレンドの仕方は0%から100%まで無段階。例えば、ウィスパーボイスの「穏」とパワーボイスの「凛」とをブレンドすると、ささやくような歌い方から力感あふれるシャウト系の歌い方まで、曲の中で無段階で変化させることが可能。「曲の歌い出しは静かなタッチで、サビの部分は力強く」といった歌い方の「調子」を容易に変えることができる。
「VOCALOID4」の新機能によるものだが、その機能を活かすには対応するボーカルライブラリがなければはじまらない。特に、しっかりときれいな「結月ゆかり」の声は──表現の幅を容易に広げることができるという意味で──最適の素材だ。
(天野 司)