ソフトを開発しようと思った動機、背景
このソフトは弊社でWindows XP用に配布していた「F2Dユーティリティ」をWindows 7で使いたいというユーザからの問い合わせから生まれました。「F2Dユーティリティ」はProgram Files、Documents and Settingsフォルダをほかのディスク装置に移動するソフトです。数年前、ネットブックの火付け役であるASUS社のEee PC 4G-Xというノートパソコンがありました。この機種は内蔵C:ドライブが4GBしかありません。そこで弊社はSDカードを擬似ハードディスク化して、SDカード(このとき、すでに16GBがありました)を使い、C:ドライブの容量不足の補助を考えました。それが「F2Dユーティリティ」です。「F2Dユーティリティ」はSDカード、CFカード、USBメモリをハードディスクとしてWindowsに認識させます。これを使えば、SDカードをハードディスクとして使えるようになります。D:ドライブとしてSDカードを認識させれば、あとはここにC:ドライブのフォルダを追い出せばよいわけです。
Eee PC 4G-Xにような極端な機種はなくなり、SSDの容量も32GB以上があたり前になり、もはやこうしたソフトは不要だと思っていました。ところが、テクニカルサポートにWindows XP用のソフトを無理やりWindows 7で動かしたいという要望が入ってきました。
以来、気になっていろいろと試行実験をした結果、SSDの容量が512GBを超えるまでは「F2Dユーティリティ」は必要だという結論になりました。そしてSSDの高速化を追求したときに、容量がSSD≒ハードディスクになるまでこの欲求は続くということでした。
例えば、最近のゲームでは1タイトル50GBの容量を必要とするとのこと……本当でしょうか? もし本当ならば、SSDの容量がいくらあっても足りません。では、そういうタイトルはハードディスクに入れればよいのではないか? いやいや、それではSSDを使って高速化する意味がありません。
そうです。SSDを使う最大の理由はその高速性にあるわけです。「SSDは容量が小さいから、使わなければよい」という考え方は現実的でも、根幹に関わる消極的な使い方といえるでしょう。
2TBのハードディスクでも常時使っているのはそのうちの一部で、正味10GBにも満たないものです。これは経験的に理解していました。つまり普段使っているデータはSSDへ、そうでないものはハードディスクに配置すれば、この問題に解答が出せそうです。そうして開発したのが「ハイブリッド・ドライブ」です。
開発中に苦労した点
ずばりマイクロソフトの迷走でした。「ハイブリッド・ドライブ」は、シンボリックリンクというWindowsの機能を使用しています。もともとはUNIX/Linuxの機能です。ショートカットといえばわかるでしょうか。Windowsのショートカットはファイルの拡張子つまり最後の名前が.lnkになる制約があり、UNIX/Linuxのシンボリックリンクほど互換性がありません。例えばhoge.txtのショートカットを作ると、hoge.txt.lnkという風にファイル名が変わってしまうのです。シンボリックリンクはhoge.txtに対してhoge.txtというショートカットを作る機能だと思ってください。
シンボリックリンク作成コマンド「mklink.exe」はWindows Vistaから実装されています。今回はこの機能を使いました。ここで問題。シンボリックリンクは実行プログラムに対応していないのですね。hoge.exeというプログラムに対してシンボリックリンクを張ると、リンクからうまくhoge.exeを起動できないのです。
熟慮の末、実行プログラムはシンボリックリンクの対象から外すことにしました。GUIの普及とともに肥大化しているのはデータであり、プログラムの比率はどんどん少なくなっているのです。ということで除外しました。これがUNIX/Linuxですと、OS本体がガンガンとシンボリックリンクを張って縮合しています。
二つめがWindows XPからのデグレードです。意外に思うかもしれませんが、Windows NT 4の改良型がWindows XPです。Windows 7/VistaはWindows NT 3.5からの改良型です。つまりベースとなるフレームはWindows 7/Vistaの方が古いのです。この結果、さまざまな問題がWindows 7/Vistaで発生しました。Windows 7/Vistaの非互換性問題の多くは上位互換性ではなく、下位互換性から起きていたわけです。今回はそのうち、ファイルのタイムスタンプが工場出荷状態でOFFというものでした。Windows XPではファイルの読み書きがあった瞬間、それをファイルのプロパティに記録します。これがWindows 7/Vistaでは記録されないのです。あった機能が途中でなくなるというのは落とし穴でした。幸いスイッチがOFFになっていただけなので、ONにしてこれは回避できました。
ユーザにお勧めする使い方
(1)ノートパソコンを利用している方
姉妹品の「プチフリバスター」が別途必要ですが、内蔵のCFスロット、SDスロットとC:ドライブを複合してみてください。メーカー保障のなくなる改造やディスク交換を心配せずにC:ドライブの空き領域を広げることができます。
(2)SSD+デスクトップPCユーザ
C:ドライブにファイルをガンガン放り込み、SSDの高速を堪能してください。そして適時複合化すれば、普段使わないファイルはハードディスクに追い出されてゆきます。
どちらにもいえることですが、最初は当たり障りのないフォルダを複合化し、少しずつ複合化するフォルダを増やして動作確認をしてください。99%のソフトは問題ないのですが、たまに動かないアプリケーションが出てきます。動かないアプリケーションが出たならば、所在するフォルダを複合化から解除してください。解除すれば、元通り動くようになるはずです。
特にセキュリティ対策ソフトと電子メールのフォルダは除外してください。セキュリティ対策ソフトは、自分自身の構成ファイルを書き換えるプログラムを見つけたら攻撃と見なすはずです。いや、そうでないと困ります。「ハイブリッド・ドライブ」は主要なセキュリティ対策ソフトの格納フォルダは除外するようにしていますが、これもメーカーの仕様変更でどう変わるかわかりません。なにより新しいセキュリティ対策ソフトには対応できません。電子メールソフトも意図的に除外してください。非常に重要なフォルダですので、除外推奨です。
現行の「ハイブリッド・ドライブ」は、作動中のプログラムの所在するフォルダを複合化しようとすると警告を出し、注意を促すようにしています。ですが、パソコンというものの性質をよく理解して本ソフトを活用ください。
あと、大量の複合化を行ったあとはデフラグしてください(!)。複合化とはC:ドライブにあったファイルの実体をほかのドライブに移すことです。移したファイルのあったスペースだけ隙間できます。複合化後のC:ドライブはスポンジのように空き領域ができます。この状態はSSDであったとしてもよい状態ではないです。デフラグしましょう。
今後のバージョンアップ予定
Ver.1.2からワンタッチ・バックアップ機能が付きます。複合化前に念のためにシステムバックアップを簡単にできるように、バックアップの呼び出し機能を付けました。知らない人も多いと思いますが、Windowsには標準でバックアップ・復元機能があります。Ver.1.2からこれを簡単に呼び出せます。
さらに二段構えのバックアップとして、バックアップソフト「PBTM+TM」の試用版を付けます。試用版といっても、通常のバックアップはすべて使用できます。Windows標準のバックアップでは手が届かないところを「PBTM+TM」でカバーします。システムのバックアップはOS標準機能を、ドキュメントのバックアップには「PBTM+TM」を使うのが上手な使い方です。
((有)電机本舗)