近年の「ATOK」は、「入力した文章をいかに正しく変換するか」というだけでなく、入力ミスと判断した語句では正しい候補を推測したり、同じ意味を持つ異なる表現や関連する語句までも候補としたりしてくれるようになっている。少々大げさにいえば、入力作業の効率化という域を超えて、頭の中で文章をまとめる作業をアシストしてくれるような方向への進化ともいえそうだ。日本語入力OFFで入力した文字からでも変換できるのは、ほんの数文字分のタッチも無駄にせずにすむし、外来語に対する日本語候補の表示や電子辞書との連携も、考える作業をできるだけ止めずにテキスト編集に専念させてくれる。それによってできたゆとりは、より豊かな表現を求めて推敲を重ねたり、テキスト全体の構成を見直したりすることにもつながり、ひいては文章全体としての表現力を高めるのに役立つ。
……と、ちょっと形式張ってしまったが、もっとカジュアルでラフな使い方でもOK。最新の流行語、新語を取り入れながらブラッシュアップされる変換エンジン、話し言葉や方言にも対応した表現モードの切り替えなどは、blogやメール、SNSが主な用途というユーザにとっても使い勝手をぐんと高めてくれる。
(福住 護)