回転や切り抜きといった「画像全体の加工」に機能を絞った、ユニークなグラフィックソフト。ディスプレイに表示しきれない、サイズの大きな画像を切り抜くような場合、全体を縮小した方がおよその位置は掴みやすい代わり、pixel単位のような細かいレベルでの調整は難しくなる。「kujira」はそうしたジレンマの解消を目指しているようだ。Step2が「傾き補正Rough」、Step4が「切り抜きRough」と分かれ、さらにStep5で「傾き補正・切り抜きFine」という作業手順になっているのは、ソフトの画面を眺めているだけでは「なぜ、このような構成になっているのか」わかりづらいが、実際にやってみると、その意味がなんとなく見えてくる。
例えば、画像の回転や平行移動によってできる余白を切り抜きたい場合、Step4を飛ばしてしまうと、Step5だけではうまく作業できない場合が考えられる。というのも、Step5で切り抜き指定できるのは、周辺部に表示された8エリアだけなので、この部分には(回転や移動でできた)余白だけが表示され、肝心の切り抜きができないということが起こり得るからだ。そこで、あらかじめStep4で適切なサイズに切り抜いておくことで、周辺部の等倍表示というメリットを活かした、精密なエリア指定が可能となる。
こうした特徴を理解しておけば、あとは同じ設定を繰り返し利用したり、不要なステップを飛ばしたりすることで、効率的な加工を行えるだろう。
(福住 護)