「Bve trainsim」は、とにかくリアルさが追求された列車運転シミュレータだ。自動車の分野でも、リアルな動きはある程度割り切り、エンターテイメントとして他車とのレースを楽しむゲーム仕立てのソフトと、とにかくリアルな運動性能や操作性を追及し、ゲーム性は二の次としたリアリスティックなドライビングシミュレータとがあるが、「Bve trainsim」は、いわば後者のタイプの鉄道版と考えればよい。そうしたスタンスのソフトなので、ゲーム性はそれほど高いわけではない。例えば、駅での停止位置にぴたりと止めるとボーナス得点が追加されたり、定刻通りに運行すると加点されたり、といったことはない。それどころか、そもそも得点の概念自体が存在しないのだから、ゲーム的な要素は非常に薄い。
しかし、だからといって「Bve trainsim」が楽しくないと考えるのは早計だ。たとえ点数が表示されなくとも、ゲームならではの楽しいイベントが発生しなくても、思い通りに列車を運行するのは非常におもしろいものなのだ。リアルを追求しているからこそ操作が難しく、難しいからこそ思い通りに動かせると達成感が得られる。「Bve trainsim」はそうしたソフトだ。
ここまでリアルだと、たしかに最初はとっつきにくいと感じられることもあるかもしれない。例えば列車は、ブレーキの緩解操作をしなければ、たとえノッチを上げても動き出したりはしないので、そもそも最初は「走りはじめる」ことさえできないかもしれない。だが、そのリアルさがあるからこそおもしろいのだ。鉄道に興味がある人には、ぜひとも試していただきたいソフトだ。
(戸土田 淳三)