明るいが、少し変わった女の子との物語が描かれた学園恋愛サウンドノベル。前半はラブコメ風、後半はサスペンスタッチと、プレイヤーを飽きさせない。伝統ある無線部を潰さないため、直哉は部員の勧誘を開始する
「子守唄を貴方に…」は、主人公の少年と、ちょっと不思議な同級生の少女「紗奈」との物語を描いた、ちょっぴり切ない学園ラブコメサウンドノベル。主人公は、小望月高校の二年生で無線部部長の「岡崎直哉(おかざきなおや)」。部長といっても、いまどきアマチュア無線に興味を持つ高校生はおらず、部員は直哉ひとりだけ。部活で使用している無線機も部の設立当初からある、年期の入った代物で、メンテナンスができる先輩がいなくなった現在、何かと調子が悪い。
一学期の期末試験が終わり、夏休みを迎える前のある日、ついに無線機がまったく反応しなくなってしまう。直哉は、新しい無線機の購入を無線部顧問の教師に掛け合いに行くが、逆に無線部の廃部を宣告されてしまう。廃部を免れるには、顧問が出した(1)部員をもう二人集める、(2)掛け持ちは認めない、(3)期限は学期末までの二日間、という三つの厳しい条件をクリアしなければならない。創部30年の由緒ある部を自分の代で潰すわけにはいかない! かくして、直哉の熱い物語がはじまる……。
偶然の出会いと直哉の捨て身の勧誘で、紗奈が部員に
物語のヒロインは「小貫紗奈(こぬきさな)」。直哉と同じ高校に通う、明るく前向きな少女だ。同学年だが今回、偶然知り合うまで面識はなかった。低血圧のためか、午前中は控えめで落ち着いた雰囲気だが、午後になるとテンションが上がって底抜けに明るくなり、頭に大きなうさぎの髪飾りを付ける。テンションが上がっているときに少し強引にお願いされると、何でも引き受けてしまうお人好しなところがある。
「美俣武尊(みまたたける)」は、直哉と同じクラスの“人気者”男子。目と心に乙女の輝きを宿し、女子の間では“頼れる姉御”的な地位を築いている。性格は明るく面倒見もよく、友達としては最高の男だ。問題があるとすれば、直哉のことを恋愛対象として見ていること……。
「木田司郎(きだしろう)」は、パソコン部の部長をしているイケメン。直哉と同じクラスで、美俣とは幼馴染み。顧問の言葉を拡大解釈して、直哉の部員勧誘活動をとことんまで妨害してくる嫌な奴だ。
そのほかにも、無線仲間のゲンさんをはじめとした個性的な人物が登場し、物語を彩る。
BGMが充実。ゲーム終了後は、ぜひ美術室や音楽室も覗いてみよう
ゲームの内容は、恋愛モノ仕立てのサウンドノベルだ。選択肢や選択による分岐はなく、一本道で最後までテンポよく楽しめる。ゲームで使用されているキャラクタグラフィックやBGMはすべてオリジナル。システムには「吉里吉里」が採用されている。
セーブスロットは全部で20個が用意されている。セーブしなくても、すでにプレイしてあれば、メニューで「はじめから」を選択した場合でも、チャプター単位で開始ポイントを指定できる親切設計になっている。
全22曲のBGMから好きなものを選んで視聴できる音楽室や、一枚絵から好きなものを選んで閲覧できる美術室も用意されている。なかでも音楽室は、ただ単に選択したBGMを演奏してくれるだけのものではなく、画面下部にその曲に関するエピソードや解説などが表示されるのがうれしい。全プロローグ終了後に再生されるオープニングムービーも必見だ。