ソフトを開発しようと思った動機
「姫踊子草」を開発する前の時点でローマ字入力を十年以上使っていたのですが、どうにも滑らかに入力できずに困っていました。努力の甲斐あって、身近な人には十分速く見えるらしいのですが、私自身は思ったように入力できない不満をいつも感じていました。キーボードアレルギーという言葉ができたのはずいぶん以前のようです。同じキーボードが広く使われている一方で、努力の果てにも体がそれを受け付けない方がたくさんいるようでした。人間は道具を作ることで、他の動物との差をつけたと聞きます。キーボードという道具がまずいのならば、道具を改良してしまえばいいじゃないか──それが「姫踊子草」の第一のはじまりでした。
ところで、当初は自分が考えた入力法の専用ソフトにするつもりでした。ですが、特許を調べると、たくさんの方がいろいろな方法を考えてきたことがわかります。広く流通している入力法があって、でもそれでは困る人がたくさんいる。多くの人が解決法を考えているのに、誰もが便利と認めたものがない。どうしてなんだろう、と。
「最高の文字入力法は人によって違う」──それがすべてを理解できる、唯一の答えでした。一つではなく、多くの入力法を用意することを決めた、第二のはじまりでもありました。
開発中に苦労した点
開発中は自分の好きな入力法が使えないことがある、という当たり前の話が一つ。文字を入力できるあらゆるソフトと、それとは別に各種IMEとの連携を考えなければいけないところは大きいですね。これまで一歩一歩解決してきましたが、いまでも悩みの種は尽きません。地味なところでは、「設定窓口」で取り消しや再実行ができるようにすること。これだけいろいろな項目があるソフトは、うっかり間違った操作の取り消しがぜひともほしいところなのですが、作る方はなかなかの手間になります。
ユーザにお勧めする使い方
他のソフトにはない機能の代表は、やはり補助鍵盤画像でしょうか。「設定窓口」で「キー操作を表示する」を有効にしてタイピングするとちょっと楽しいかも。
いろいろな機能があるのを知ってほしい反面、すべての機能を使わなければ損だとは考えないでほしいとも思います。もとよりこういう福祉的な仕事は、いらない人にはまったく不要に思えるものなのです。使わない機能分の代金は、その機能を必要としている他の方の支えになっていると考えてもらえるとうれしい。
これを読んでいるみなさんももちろんですが、みなさんの周囲にいらっしゃる、キーボード練習の努力に疲れ果ててしまった方にこそ、当ソフトのような存在を教えてあげてほしいと思います。
そうそう、「設定窓口」は一般的な設定ダイアログと違って、ウィンドウのリサイズができます! 狭いと思ったら上下に伸ばしてご活用ください。こういうのはあらゆるソフトでできるようにしてほしいですね。
今後のバージョンアップ予定
何をするにせよ「困っている人を助ける!」という基本を維持し続けたいと考えています。
現在、主に取り組んでいるのは説明書の再執筆。現在欠けている配列定義ファイルの作り方も含めた書き直しが進行中です。できれば近いうちにUSBメモリ起動版も作りたい。そしてなにより確かな動作を追求し続けたいと思っています。
(鈴見咲 君高(すずみざき きみたか))