「Shuriken」は、その初版が1998年に「一太郎Lite」に同梱されて以来、昨年(2008年)で10年になりました。この間、IMAP4やSSL、S/MIMEなど、めまぐるしく変化・発展するインターネット技術を取り込みながら、一貫して「軽快で使いやすく、そして安全なメーラ」を目指し、また「ToDoバンク」「フォルダウォッチ」など、新しいメール環境の提案を行ってまいりました。しかし、国際化──特にUnicodeへの対応──については、これまで消極的でした。「Shuriken Pro3」 で、多言語対応を行いましたが、そのときもUnicode化ではなく、各国の言語に切り替えて操作する方法を採用しました。その最大の理由はWindows 95/98/Meの存在でした。これらは、OS自体のUnicode対応が不完全であり、Unicode化するよりも言語を切り替えて動作させる方が効率がよく、実用的にも有利と判断したためです。その後、Windows Meのサポートが終了し、Windows XP/Vistaへとバージョンを重ねるにしたがって、OSのUnicodeサポートも充実してきたため、Unicode化への技術的障壁はほぼ解消しました。
一方、技術的な問題以外にも、まだ乗り越えるべき課題がありました。それは開発工数です。Unicodeに対応するためには、メールの表示・編集はもちろん、内部のデータ処理全般にわたって、プログラムの書き換えが必要です。また、メールデータやアドレス帳なども、Unicode情報を保存できるようファイル形式を変更するため、旧バージョンからの環境移行にも配慮しなければなりません。入念に工数を見積もり、開発計画を練って、当初「2009年7月ごろの発売」というスケジュールを組んでいましたが、発売が遅すぎると却下され、工程の見直しと協議を重ね、開発担当者の増員と引き替えに、「『JUST Suite 2009』より1ヵ月遅れて発売」という線で妥協しました。このようにして、長年の悲願であったUnicode化に、ようやく着手できることになったのです。
ところで、設計・開発に先立ち、私たちは目標を掲げました。それは、
- Unicode化によって操作性が低下しないこと
です。つまり、Unicode化することによって操作が煩雑になったり、動作が遅くなったりしてはならないということです。これは「日本語に強いジャストシステムが作る、日本人のための国産メーラ」の責任だと考えています。「Shuriken 2008」をお使いの方が「Shuriken 2009」をお使いになって、「あれ? どこが変わったの?」とお感じいただけたなら、私たち開発者の努力も報われます。見た目は同じですが、中身が違います。もちろん今回の開発の中心は、やはりUnicode化ですが、それ以外にも、迷惑メールの誤判定を防止する「ホワイトワード」や、サブフォルダも監視できる「フォルダウォッチ」、添付ファイルを保存したフォルダをエクスプローラで開く機能など、ユーザのみなさんからいただいたご要望への対応や、安全性強化のための改良なども行っています。誕生10年目にして生まれ変わった「Shuriken 2009」を、ぜひお試しください。
((株)ジャストシステム)