呪われた古き館の中で、青白い顔をした正体不明の女中が語る、ビジュアルノベル形式のオムニバスストーリー。「あなた」の記憶を甦らせるため、謎の女中が語る「呪われた館の悲劇の物語」
「ファタモルガーナの館 体験版」は、ヨーロッパの古い館を舞台にした“西洋浪漫”サスペンスノベル。耽美的なイラストや、ポルトガル語の歌詞が挿入された曲も含まれる全曲オリジナルの楽曲が、プレイヤーを物語に引き込む。数章立ての「完成版」は2011年夏に公開される予定で、「体験版」ではそのうちの第一章(一つ目の扉)+αを楽しめるようになっている。
ゲームの舞台は、木々が鬱蒼と茂る暗き森の中に建つ、荒廃した古き館。その中で「あなた」は目覚める。しかし、「あなた」にとって、それは見知らぬ館だった。それどころか、自分がいったい誰なのかもわからない。館の中には「あなた」を「旦那さま」と呼ぶ一人の女中がいた。漆黒の髪で青白い顔をした、名も知れぬ、得体の知れない女中。彼女は目覚めたときから傍に寄り添い、「あなた」の目覚めを大いに喜ぶ。そして「あなた」の記憶を甦らせ、「あなた」が「自分が誰なのか」を認識できるようにと、館の中を案内し、過去にそこで起きた事件を「あなた」に示してゆく……。
物語は、遥か過去の出来事であるにもかかわらず、実際にその場で起こっているように「あなた」の目の前に再現され、時折、黒い髪の女中が「あなた」に語りかける形で展開される。
第一の物語は、館に住む仲睦まじい貴族の兄妹にもたらされる悲話
「体験版」で語られるのは、1603年を舞台にした物語。当時、館には豊かな薔薇園があり、「薔薇の館」と呼ばれていた。館の主は、美しい亜麻色の髪が特徴で、「ローズ」という苗字を持つ貴族の一族。一族には、とても仲のよい兄妹がいた。兄の「メル」は17歳。ローズ家の長男で、社交などは苦手だが、勉強熱心で頭がよく、教会の神父からも将来を嘱望されていた。妹の「ネリー」は14歳。ローズ家の長女。気が強くてわがままなところはあるものの、活発で明るく、メルを心の底から慕っていた。
メルとネリーの二人が、それまでの子ども時代から一人前の大人への変化を求められる、ちょうどその変革期に事件は起こる。きっかけとなったのは、とある嵐の夜にローズ家にやって来た少女の存在。純白の髪で赤い目をした14歳から16歳くらいの美しい少女だった。侍女としてローズ家に勤めるようになり、これによって三人の運命が絡まり合ってゆく。
「一つ目の扉」+αの物語を読了したあとには、(恐らく本編ではカットされる可能性の高い)「舞台裏」を楽しむことができる。「ファタモルガーナの館」の裏話がコミカルなタッチで語られる、必見のコーナーだ。そのほか、作品中の音楽を選んでプレイできる「音楽館」や、イラストを楽しめる「美術館」も用意されている。
BGMに採用された全曲オリジナルの楽曲が、物語に深みと迫力を与える
大きな特徴は、BGMとしてポルトガル語の歌詞が挿入された楽曲を採用していること。ゲーム内で流れる音楽は、すべてがオリジナル作品となっている。西洋絵画を想起させる陰影の強い、重厚なイラストとも相まって、場面場面で変化する多彩な楽曲の調べが、作品に豊かな膨らみとリアリティを与えている。淡々と描かれ、どぎついイラストや“いかにも”な効果音などは一切用いられていないにもかかわらず、作品にサスペンスの予感を与え、恐ろしさを感じさせるものは──シナリオやイラストの力も、もちろんあるが──なんといってもBGMと効果音の使い方による点が大きい。
操作は一般的なノベルゲームに準拠したもの。操作性はよい。ゲームのセーブなどは、画面右下にマウスカーソルを移動させたときに表示されるメニューで行える。セーブスロットはページに分かれ、全部で40が用意されている。コンフィグ画面では、文字の表示速度やBGM/効果音の音量を調節することが可能。そのほか、文章の自動送り機能やスキップ機能、メッセージ履歴機能なども用意されている。画面の右クリックなどで文字を消し、イラストをじっくりと楽しむことも可能だ。