ソフトを開発しようと思った動機、背景
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)セキュリティセンターでは、セキュリティ対策の普及に向けた取り組みを実施しており、政府機関・地方公共団体や重要インフラ事業者向けのセキュリティ対策の普及並びに中小企業に向けたセキュリティ対策の普及に取り組んでいます。その一環として、IPAでは「中小企業で実施しなければいけない最低限の情報セキュリティ対策を自社で実施しているか」を診断するシートや、診断項目に関する解説パンフレットを作成し、公開しています(http://www.ipa.go.jp/security/manager/know/sme-guide/)。一般的に大企業と比べて経営資源が限られている中小企業では、IT担当者は他業務との兼務が多い状況であり、情報セキュリティ対策への取り組みが遅れがちです。そのため、これらの現状に即した情報セキュリティ対策を学習できるツールが必要と考え、開発に至りました。
開発中に苦労した点
中小企業におけるIT活用の実態を考慮する点でいくつかのトレードオフがあり、それらの判断に苦慮しました。また、開発にあたり、次のような外部識者によるアドバイスのほか、実際に中小企業10社へヒアリングを行い、現場の生の声を取り入れることに苦労しました。
- 情報セキュリティに関心を持つきっかけを作るため、日常の事例をもとに問題提起をするような構成の教材であること
- 中小企業ではIT担当者は他業務との兼務が多いため、短時間で学習できること
- 日常の業務の一コマを取り入れた、親しみやすいテーマで学習していただくため、学習者の方の業種と職位に合わせて学習内容を選べるものであること
開発の裏話
●表現方法とファイルサイズのギリギリのバランスを取りました
教材を作成するにあたり、動画・静止画・音声等の表現方法を検討しました。中小企業の限りあるリソースを考慮し、学習時間の目安を5分とし、教材のサイズを2MBとするため、動画とせず、画像としました。また、音声もすべての内容とせず、導入部分だけとしました。画像についてもセリフの吹き出しの位置や形等を工夫して、可能な限り画像枚数を削減しました。●「次へ」ボタンが押せるようになるまでの時間を5秒としました
当初は「次へ」ボタンをどんどん押して学習を進めることが可能でしたが、「学習という点で操作上、どんどん押し進められるのはよくない」との意見が上がり、ボタンが押せるようになるまでの時間について、2秒とする案もありましたが、最終的には5秒案を採用しました。
●パソコン1台で利用できるようにしました
必ずしもインターネットや社内ネットワーク環境が整備されているとは限らない中小企業のIT環境を考慮し、パソコン1台で利用できるツールとして開発しました。また、単にFlashファイルなどでWebサイトに掲載する形を取らなかったのは、「今後のバージョンアップ予定」にあるように、自社に即したオリジナルの学習コースを作成できるようにするためです。
ユーザにお勧めする使い方
IPAでは以下の五つの利用シーンを提案します。各シーンの詳細は、IPAのWebページをご覧ください。
- 利用シーン1:毎日1テーマ5分ずつ会社や自宅で学習してみましょう
- 利用シーン2:社員教育に取り入れてみましょう
- 利用シーン3:危険予知活動・改善活動のひとつとして活用してみましょう
- 利用シーン4:「5分でできる自社診断シート」を組み合わせて活用してみましょう
- 利用シーン5:周りの人に勧めてみましょう
今後のバージョンアップ予定
以下の提供を予定しています。- 個別テーマごとの学習コースの提供(例:情報漏洩に関する学習コース等)
- 105の学習テーマから自社に即したテーマを選択して、オリジナルの学習コースを作成できるツールの提供
(IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)セキュリティセンター)