大学での実習や個人の学習にも使える計算化学統合環境。マウスを使ったわかりやすい操作で、複雑な分子モデルも手軽に作成することができる。Gamessなど、定評のあるプログラムの計算結果を可視的に表示する機能にも優れている。「Facio」は、対話的な3D分子モデルの作成や、分子軌道法、分子力学法、分子動力学法などによる計算結果の可視化を目的に作成された計算化学実験用のソフト。わかりやすいインタフェースで目的の分子を手軽に構築でき、各種計算プログラム用の入力データに変換できる。対応する計算プログラムは、
- PC GAMESSおよびWinGamess(分子軌道計算)
- MSMS(溶媒排除表面の計算)
- TINKER(分子力学計算、ペプチドのモデリング)
- Gaussian 03W(分子軌道計算)※商用
- UTChem(分子軌道および分子動力学計算)
- MOPAC(分子軌道計算)
モデリングは一から行うのではなく、あらかじめ用意された多数のPDB(Protein Data Bank)形式分子構造データから、基本となる骨格を読み込むところから行う。読み込んだ基本骨格に必要な官能基を付けたり、原子を置き換えたり、結合長や結合角、二面角の変更を行ったりして、目的の分子を完成してゆく。「二つのPDB形式の分子構造データを読み込んでひとつにマージし、あとから読み込んだ分子の相対位置や角度を調整する」といったこともできる。また、各分子の任意の結合を直線上に並べることも可能。その後、原子の削除、結合の生成を行うことで、ひとつの分子モデルに合成することができる。マウスによる操作は、わかりやすく使いやすい。
GAMESSなどを用いた分子軌道法による構造最適化も可能。計算結果は直ちに分子モデルに反映される。分子軌道計算は、半経験的分子軌道法(AM1/PM3/MNDO)、Abinitio法および密度汎関数法による計算を行える。
TINKERと連携してのポリペプチドや核酸のモデリングを行うことも可能。そのほか、糖鎖のモデリングに必要なグリコシル基も多数用意されている。
分子の表示では、GAMESSなどで得られた分子軌道の3D表示による可視化機能を備えている。マルチ画面表示も可能で、GaussianまたはPC GAMESSのCube MOファイルを最大20個まで読み込ませて、同時に表示させることができる。サブ画面での分子の配向は、メイン画面での配向と常に同じになるようになっており、同時にたくさんの分子軌道を正確に同じ方向から見て比較することが可能だ。各MOの画像をBMP/PNG形式のファイルで連続的に保存することもできる。
分子の基準振動のアニメーション表示による可視化や、電子密度と静電ポテンシャルの等値表面、IRCの計算結果の可視化も可能。溶媒排除表面(Solvent Excluded Surface)の計算を行い、その表面静電ポテンシャルをマッピングすることもできる。タンパク質の2次構造、4次構造の色分け表示もできるなど、優れた3D表示機能を多数備える。
Ver.11.1.1からは、FMO計算用の入力ファイル作成用GUIが実装された。フラグメントの自動分割や対話的な手動分割なども行えるようになっている。