精霊や悪魔が存在し、すべての種族がなかよく暮らす国──この国を守る騎士たちのストーリーが描かれたシナリオ重視のファンタジーRPG。「花のゆりかご」は、人間はもちろん、精霊や悪魔に天使、はては魔物といった不思議な生き物が普通に暮らす世界の、「花の国」と呼ばれる小国「シア」を舞台にしたRPG。しかし、国同士の戦争などもあり、決して平和とはいえない。しかも魔法を使える精霊などは、戦争の「道具」として使われることも多い。
シアは住民の大半が難民で構成された特殊な国で、人間や精霊、悪魔などがなかよく一緒に暮らしていた。そんなシアを守るのが花の騎士「パミー・エレウェン」。騎士になった者には宝石の名前がつけられる。そして、騎士の頂点に立つのが6人の花の騎士からなる「六騎士」。他の花の騎士とは異なり、六騎士になれるのは、意思を持つ不思議な種「世界樹の種」が選んだ者だけ。不思議なことに、六騎士は一人が死ぬと、残りの者も1年以内に死んでしまい、世界樹の種は次の六騎士を選ぶという。
ゲームは六騎士のひとりが難民救助の途中で亡くなることからはじまる。生き残った5人の騎士に残された寿命は最大でも1年。次の六騎士となる子どもたちを軸に、残された5人の騎士や騎士の友人たちのストーリーが描き出される。メインキャラクタとなる少年「アリス」は、騎士である両親が戦闘でなくなってしまい、孤児として妹とともに城に引き取られる。同じく戦災孤児である「エヴェリン」や、兄が有能な騎士の少年「ヨツハ」と楽しく毎日を暮らしていた。
特徴のひとつが、見たいシナリオを選べるシナリオ選択方式。最初は「プロローグ」イベントしか選択できないが、イベントをクリアすることで、選択できるイベントのタイトルが増えてゆく。一度終わらせたシナリオをもう一度プレイすることも可能。この場合は「イベントモード」と「マップモード」のどちらかを選択できる。イベントモードではストーリーを反芻することが可能で、マップモードでは自由に街中を歩き回ることができる。
見逃すことができないのが魅力的なストーリー。シアに住む人々は心優しく、子どもたちは幸せに暮らしている。しかし、戦争中という事実が子どもたちにも暗い影を落とす。両親の死を受け入れられず、心が壊れてしまったアリスのたったひとりの肉親である妹。過去の記憶により悪魔を毛嫌いする少年「キッカ」と、彼に嫌われながらもキッカと友達になりたい、人間と悪魔のハーフであるエヴェリンの関係。そして、誰からも愛されながらも、自分が誰の役にもたっていないことに悩むヨツハ。口の悪いひねくれ者ながら、実は誰よりも友達思いで自分の口の悪さを嫌悪する「フォーゲル」など、大人に守られた子どもたちも、それぞれの問題を抱えて毎日を暮らしている。
さらに、仲間のうちの一人が死に、1年以内に死ぬことを運命づけられている六騎士の物語もイベントによっては語られる。短い時間しか残されていない彼らのストーリーは必見だ。