とある事情で会社を辞めさせられた主人公が、ヒロイン「マイ」と出会って成長してゆく純愛短編ビジュアルノベル。「月照〜ツキノテラス〜」は、ある会社員が主人公のビジュアルノベル。広告代理店でトップの成績を取るほど優秀だったが、働き過ぎで自律神経失調症になり、会社から放り出されてしまう。会社のためにがむしゃらに働いたにもかかわらず放り出された主人公は、貯金を切り崩しながら家に引きこもることに。しかし、そんな生活も貯金が底を突くことで終焉を迎える。
明日の食費にも困るようになった主人公は、生活費を稼ぐためニューハーフパブのボーイ兼事務員として働きはじめる。そして、その店のNo.1の“女の子”「マイ」と出会う。
最大の特徴は、「マイ」がニューハーフパブで働く“自称女の子”という点。マイは、身体は男性ながら、心は女の子そのもの。手術で女性化こそしていないが、かわいらしい顔立ちに腰まである美しい髪、そして西洋の血が入ったクォーター特有の白く透き通った肌など、普通の女の子以上にかわいらしい。
理不尽に会社を追放されて傷ついた主人公と、やさしく素直で誰からも好かれるが、“自称女の子”というハンデを持って生きるマイの、少し不器用でほのぼのとした恋愛模様がやさしいタッチで描かれる。
意外性のある設定と読者を引き込むストーリーだけでなく、演出面も非常に優れている。特に、淡い色調で描かれるグラフィックは美しく、ほのぼのとした物語にマッチしている。グラフィックも迫力のある1枚絵のほか、ストーリーに合わせて表情や姿勢がクルクルと変わるものなど、種類は豊富だ。
マイのセリフはすべてフルボイス。少女のようなかわいらしい声でプレイヤーに語りかけてくれる。また特筆すべきなのが、主人公がゲーム内で歌うテーマソング。タイトルと同じ「月照」という曲で、淡い色調のグラフィックやほんわかとしたストーリーに合ったしっとりとした曲に仕上がっている。
これらのCGグラフィックや歌、そしてBGMなどは、一度エンディングを迎えると「オマケ」メニューから繰り返し鑑賞できるようになる。このためエンディング後も、じっくりと余韻に浸ることができる。