戦いを繰り返す二国の頂点に立つ“少年王”と“少女王”、それぞれの視点で描かれる物語。戦闘はリバーシによって行われる。「ただ、真っすぐに」は、架空の島で起きている戦争を描いた作品。島には「ロックフォード王家」と「クラーク公爵家」がそれぞれの国を統べており、長い年月に渡って戦争をしていた。あるとき、ロックフォード王と、王の後を継いだ息子が立て続けに死去してしまう。これにより、均衡を保っていた戦力バランスが一気に崩れてロックフォードに不利な戦局となる。
プレイヤーは、ゲーム開始時に「ロックフォード」または「クラーク」どちらかの陣営を選択する。困難な立場のロックフォード陣営を選択した場合、物語の主役はアイナとなる。アイナは、王家に残された唯一の跡継ぎにあたる少女。年若いアイナは父と兄の意思を継いで女王となる決意をする。だが、自分の意思ひとつで人々が死んでしまうことに心を痛めている。若干17歳の少女であるアイナは、自分を王女として扱わないような親しい友人を作りたい、という悩みも抱えている。
一方、クラーク陣営側を選択すると、主人公はクラーク公爵家の次男「カイン」となる。カインは城下町で出会ったパン屋の美しい少女が気になるが、なぜか兄も同じパン屋に出入りすることを知り、複雑な気持ちになる。さらに、大きな力を持つという伝説の剣「ファルシオン」の存在や、無愛想な女傭兵ローズとの関わりなど、さまざまな人間関係に翻弄されてゆく。
最大の特徴は、魅力的なキャラと演出の数々。特に注目したいのは、セリフが全編フルボイスとなっている点(フルボイスバージョンのみ)。キャラの性格に合った声優が声を担当しており、違和感なくセリフを堪能できる。ボイスの再生中に【Enter】キーを押せばキャンセルできるので、ストーリーをどんどん進めたいプレイヤーの邪魔にならない。ボイスだけでなく、ストーリーに合わせてクルクルと変化するキャラの表情など、細かな演出も見逃せない。
ストーリーもまた魅力的だ。まだ年若い少年少女たちが国の命運を背負って戦う様を、地に足が着いた物語として描き上げている。ロックフォード側のアイナは責任感が強く、民からの絶大な人気を集めるカリスマ。ところが、女王としての資質は十分持っているにもかかわらず、楽しみを求めてこっそり城を抜け出すほどのやんちゃぶり。対するクラーク側のカインは、性格のよいお坊ちゃま風の少年ながら、伝説級の剣術の腕前を持つ兄の優秀さに劣等感を抱くなど、描写も丁寧だ。
さらに、戦争で両親を亡くしたことで国王のアイナを憎む少年、アイナの用心棒に恋をしている少女、命を削ってクラークのために戦う傭兵の女性など、脇を固めるキャラも総じて魅力的。関西弁を話す泥棒少女など、両方のストーリーに共通して登場するキャラも存在する。
もうひとつの注目点は、章ごとにプレイできるリバーシ。相手国との戦争時にリバーシが行われ、この勝敗で紛争の結果が決まる。リバーシで負けるとゲームオーバーになるので注意が必要だ。敵側の強さはゲームスタート時に設定することが可能。強さは「弱い」「普通」「強い!」の三つから選択できる。さらに、ストーリーだけを楽しみたいプレイヤー向けとして、リバーシを回避する選択肢も用意されている。
二人のストーリーを追うゲーム本編とは別に、リバーシだけをプレイできる「練習モード」も搭載。練習モードでは、敵の強さを自在に設定することが可能。先行・後攻の選択、定石使用のON/OFF、何手先まで先読みをするかなどを自由に設定できる。定石を使用し、先読みの設定を最大値(9手)に設定すると、リバーシに慣れているプレイヤーでもかなり手こずるだろう。