ソフトを開発しようと思った動機、背景
神戸の事件が起きた1997年。当時のメディアは14歳の犯罪に釘付けになっていた。「ゲームの始まり」「透明な存在」謎めいた数々の言葉。その報道を見ながら僕は「少年Aは僕の心の中にもいる」と感じていた。誰でも心の中にある闇の部分。僕は自分の心の闇を直視することになった。それが創作の原点。その後、少年Aを取材した本「地獄の季節」を読み、僕の中の少年Aと、実在の彼の考えは違う部分が多いことを知る。しかし、共通する部分も感じた。それこそ、誰もが持つ「心の闇」。各人がそこを直視し、決死の思いで向き合うことでしか解決できない。このゲームをプレイする人たちが、自分の心の闇に立ち向かう手助けをしたい──そもそもの制作動機はそこにあった。
開発中に苦労した点
制作中は、僕の人生が何ひとつうまくいかず落ち込んでいた時期だった。そうした僕自身の状況が、ゲーム内容に如実に現れたように思える。一般的に人間は、気持ちが落ち込んできて引きこもりがちになると、どうしても思考が同じところをぐるぐる回り続けてしまうものだ。僕の頭の中でも、難解な論理が駆け巡り、ただただ上滑りしていた。
この結果完成したゲームは、制作中に僕が感じていた精神的な苦悩を、プレイヤーにも負担させてしまう内容になったのではないかと感じる。当初の目論見とは裏腹に、プレイヤーの「心の闇」を助長する危険性すら否定できない。このため完成後、何度か封印(公開停止)も考えたが、本作品を公開した事実をしっかり受け止める覚悟を持ち、プレイするか否かは各人の判断に委ねることにして、今に至る。
アマチュアゲーム作家が、このゲームから教訓を得ることがあるとすれば、「作者自身が楽しめない制作では、楽しい作品を作ることは難しい」ということだ。
ユーザにお勧めする使い方
繰り返しになりますが、このゲームは、僕の人生が大変な時期に作ったため、プレイする人を選ぶ内容になっています。一見ほのぼのした作品に見えるのに、内容は当時の僕の心境を反映してか、相当に重苦しいという印象を受ける人が少なくないでしょう。このため、事前にネット上での賛否両論を確認し、自分の感性に合うかどうか確かめてからプレイすることを強くお勧めします。ほのぼのした、ノスタルジックな子供時代を楽しみたい人には、姉妹作の「Moon Whistle」をお勧めします(編集部注:「Moon Whistle」の入手方法は作者ホームページをご参照ください)。
今後のバージョンアップ予定
本作品は、現バージョン(1.01a)にて、いったん更新終了とします。今後は、バグフィックス以外の更新は行なわない予定です。仮に将来、本作品のシナリオ周りを修正する場合は、リメイク作品として別タイトルで発表します。
(神無月サスケ)