1998年・冬。後に「second Anopheles」と名付けられるゲームの原案は二人のメンバーによって生み出された。そのとき、それはほんの小さな欠片にすぎなかった。「セカアノ」を巡る転機は翌年に訪れる。1999年・初夏。御茶ノ水電子製作所(以下、御茶電)の代表が、この原案をもとにADVゲームを企画することになる。当時、御茶電が狙っていたのはネットにおけるインタラクティブノベルの配信という分野で、あまり大それたことではなかった。しかし、別作品のためのアイデアだった「地点分岐型ADV」の要素を加味したことで、この作品は大きく生まれ変わったのである。
肥大化する開発規模、手探りの新ADVシステム構築。増えるメンバーとそのために複雑化したマネージメント。迫る締め切りにもかかわらず、圧倒的に足りない時間……。そしてついに、「セカアノ」は完成の日を迎える。
全3部完結までかかった期間は1年あまり。「second Anopheles」はある種の挑戦であった。それは“ネット配信”とか“フリーソフト”といったものではなく、「同人集団がストーリー志向の長編ゲームを作る」ということに対してである。同人ゲームの場合、根本的に長編には向いていない。動員できる人員・期間が少なく、それでも商業ベースのそれと同等の完成度を求めるならば、短いゲームを作るしかない。
なのになぜ、僕たちは、これほどの致命的な問題を抱えながらこんなゲームを作ったのだろうか。その問いに対する明確な答えは未だ見つからないが、これからも御茶電は「挑戦」を続ける。
(御茶ノ水電子製作所)