考えた戦略通りにゲームを運ぶ小気味よさと、巡り合わせや運による大どんでん返し、いわば緻密な計算と一か八かの大ばくちの両方を楽しめる「大貧民」を、とことんまでカスタマイズできるローカルルールによって、さらに面白味を増したエキサイティングなゲームだ。念のため、基本的なルールを紹介しておくと、カードはマークに関係なく3が最弱、4、5、…K(キング)、A(エース)の順で、2が最強という序列がある。プレイヤーは手札を弱いものから場札に出していき、手札がなくなった時点で勝ち抜ける。場札より強いカードを持たないプレイヤーはパス。だだし持っていても、カードを出すかパスするかは自由で、このあたりは駆け引きとなる。全員がパスした時点で1回戦(ゲーム)が終了で、最後に出した人から再スタートとなる。また、同じ数字のカードや連続数字などは、いっしょに出すこともできるので、より早くカードをなくせる。こうした特殊な捨て方は、必ず場札がないとき(スタート時点または、全員のパスでいったんゲームが途絶えた状態)のみに行え、続くプレイヤーは同じ捨て方をしなければならない。
勝ち抜けたプレイヤーから順に、大富豪・富豪・平民・貧民・大貧民と呼ばれ(6人以上の場合、平民が複数になる)、次のゲームでは、大富豪と大貧民、富豪と貧民の間で、それぞれカードを指定枚数だけ交換する。勝った者はますます裕福に、負けたものはますます貧乏になっていくというのが、「大貧民」というネーミングの由来だ。富豪、貧民、革命、クーデターといったいかにも「それらしい」ネーミングが、このゲームのドラマ性を引き立てている。
「D貧民」では、大貧民という優秀なゲームがパソコン上に忠実にシミュレートされているのがうれしい。しかも、豊富なイベントによって局面が次々に代わるのがおもしろく、ついついハマってしまう。特に「革命」は、大事に取っておいた強いカードの価値が一気に逆転してしまうので、思わぬ大逆転を演出してくれる。
また、勝負を賭けたり、大きなイベントが起きる場面でイベント名が絶叫されると、否が応でも興奮度が上がるというもの。パソコンゲームの特徴を生かして、画面と音(声)で雰囲気を盛り上げたり、得点グラフで競争心をあおったり、いろいろな仕掛けがマニア心(?)をくすぐって心憎い。
マニュアルは、ゲームの進め方やカードのルールなど、種類別の詳しい図解入り解説に加え、イベント名などの用語解説もしっかりしており、複雑なルール設定についてもとまどうことは少ないだろう。
(坂下 凡平)